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「地図状舌炎」

面白い名前であるが、舌の表面が地図のような模様になる「病気」である。「舌炎」というからには「炎症」ということであるが、本当の意味の炎症ではない。強いて言えば舌が正常でない様相をしているだけのことである。
もともと舌の表面はざらざらしている所が大部分を占めているが、ペイントが剥げ落ちたように所々に赤味を帯びて地図を思わせるような(斑紋)が生じることがあるので、「地図状舌炎」と名付けた訳である。このような赤味を帯びた斑紋が出来る原因は分かっていないし、別にこれという痛みもなく、その(地図模様)も時々変化するし、そのうち自然に消えてしまうものである。
舌に地図が出来る時期とか、体調とか精神状態の変化との関係は、個人特有の規則があるのかも知れないが、学問上の定説はなく、今のところ(原因不明)ということになっている。
しかし、この(赤み)でも舌全体に広がったり、舌の表面の(ざらざら)がなくなって(つるつる)になったり、舌が(しぼんで)小さくなったりするのは病的であり、それぞれに理由がある。ビタミンのどれかが欠乏した時とか、「悪性貧血症」の時には舌にも変化があらわれることも知られている。
それから、見られた方もあるかと思うが、舌に黒い毛が生える「黒舌症」もある。これは、(抗生物質)を服用して、口内にある色々の細菌のバランスが崩れて(毛)が生えたような様相になるものであって、見苦しいものであるが心配することはない。
また、舌に深い(ひだ)がある人もあるが、これは病気ではない。
舌の病気で一番痛いのは、「アフター性口内炎」で小さい潰瘍(Ulcer)が出来た時である。この病気は口の粘膜に生じた「神経性皮膚炎」とも思われていたが、ヘルペス・ヴァイラスによるものとの説もある。
この他にも舌の病気は数多くあるが、「舌癌」も勿論忘れてはいけない。この舌ガンは舌だけに限らないでその周りにどんどん広がって行く傾向があるのが特徴である。

ところで、舌の機能について一言しておきたいのだが、甘味、塩辛さ、酸味や苦味などの(味覚)を感知する器官である以外に、(舌の廻り)がよいとか、(舌足らず)であるかの表現にあるように言葉を喋るのに大事な役目がある

ことは言うまでもない。
さらに、舌には生命の維持にかかわる、(嚥下運動)もある。
これらの関係をうまく言い表したものに(舌先三寸)でものを言い、(舌の根)が乾かぬうちに前言をひるがえすなどがあるが、舌の前の方では言葉を話し、舌の後ろの方(舌根部)ではものを呑み込む作業をすろというように、舌の使い分けがされるということである。
とにかく、舌の味覚、喋る、呑み込むの三拍子のどれが欠けても(Quality of Life)が台無し(舌無し)になることは間違いない。

(この稿は6-4-96羅府新報に掲載されたものを少し変更した。10/17/00)